AI駆動経営

連載「AI駆動経営の実践記録」
第1章: AI導入の先にある「不都合な真実」

ブレイバーAI&阿部 勇人

はじめに:AI導入がもたらす「余剰」とどう向き合うか

AIによる業務代替の波は、もはや実証実験のフェーズを終え、実務の現場へ本格的に実装される段階に入りました。

AI駆動経営を進める上で、圧倒的な生産性向上がもたらされる一方で、経営層が必ず直面する「手厳しい現実」があります。
それは、「AIによって浮いた人的リソース(=余剰人員)をどう扱うのか?」という問いです。

新たな事業へ配置転換(リスキリング)できれば理想ですが、すべての社員が適応できるわけではありません。
この記事では、AI導入とセットで検討しなければならない「具体的な人員削減・適正化の手法」について、日本の雇用環境を踏まえた現実的なステップを解説します。

日本企業における人員削減のハードル

前提として、日本の労働法制において「AIが業務を代替するから、明日から来なくていい」といった直接的な整理解雇は非常に困難です。
解雇の4要件を満たす必要があり、経営危機でもない限り法的リスクが極めて高くなります。

そのため、AI駆動経営への移行期においては、「入り口を絞る」「評価制度を作り変える」「自発的な退出を促す」というステップを段階的に組み合わせるのがセオリーとなります。

人員適正化へ向けた4つのフェーズと具体的手法

組織をスリム化し、AI時代に適合したコスト構造へ移行するための具体的な手法は、大きく以下の4つのフェーズに分けられます。

フェーズ1:自然減と入り口の調整(ローリスク・中長期)

最も摩擦が少なく、最初に着手すべき手法です。
ただし、効果が出るまでに時間がかかります。

採用の凍結・厳格化
既存業務のための新卒・中途採用枠を絞り、全体の人数をコントロールします。

退職者の不補充
定年や自己都合による退職者の穴埋め採用を行わず、その業務をAIやRPAで自動化することで総数を減らします。

フェーズ2:人事制度改革による「適正化」(本質的なコスト削減)

AI時代に合わせて「人」から「仕事(ポスト)」へ評価の軸を移します。
このフェーズが、後のステップへの重要な布石となります。

ジョブ型雇用(職務給)の導入
役割や職務(ジョブ)に対して給与を支払う制度へ移行します。AIによってその職務自体が縮小・消滅した場合、別職種への異動(配置転換)を命じる、あるいは労使間の合意形成を経た上で給与を見直すための、合理的な根拠(前提)とすることができます。

成果主義の徹底と年俸制へのシフト
プロセスではなく、AIを活用して「どれだけのアウトプットを出せたか」で厳格に評価します。

フェーズ3:自発的な退出の促進(ミドルリスク・短期)

制度改革によって評価の差が明確になった後、AIに適応できない層に対して、金銭的インセンティブ等を用いて組織の新陳代謝を促します。

早期退職・希望退職の募集
割増退職金を用意し、一定期間内に自発的に退職する社員を募ります。

退職勧奨・PIP(業績改善計画)の運用
パフォーマンスが基準に満たない社員に対し、明確な改善目標と期限を設定(PIP)します。それでも未達の場合は、就業規則の評価基準に則って厳正な処遇(降格や減給など)を行い、並行して個別の面談を通じ、合意の上での退職(退職勧奨)を促します。

フェーズ4:外部リソースの終了と有期雇用の雇止め(ハイリスク・即効性)

法的リスクを伴うため、慎重な手続きと専門家(弁護士・社労士など)のサポートが必須となる領域です。

外部リソース(業務委託・派遣)の契約終了
AIによって代替可能な業務を担っていた業務委託先や派遣社員との契約を、期間満了をもって終了します。これらは直接雇用ではないため、契約条件に従った終了が基本となりますが、下請法や民法上の契約解除ルール(事前予告等)への配慮が必要です。

有期契約社員の雇止め
有期契約社員については、労働契約法第19条(雇止め法理)により、反復更新されている場合や更新への合理的期待が認められる場合、合理的な理由のない雇止めは認められません。契約更新の実態や期待の程度を慎重に判断し、専門家と相談の上で対応する必要があります。

おわりに:削減の目的は「AIと共存する筋肉質な組織」を作ること

人員削減は、経営者にとっても現場にとっても痛みを伴うプロセスです。
しかし、AIというゲームチェンジャーが登場した今、従来の人員規模やコスト構造を維持したままでは、企業の競争力は確実に低下します。

「誰を切るか」ではなく、「AI時代に本当に必要な人材要件を再定義し、そこに合致しない部分をどうソフトランディングさせるか」。
これが、真のAI駆動経営を実現するための第一歩となるのです。

あとがき:私自身の選択

偉そうに書きましたが、私自身の話をします。

私には、業績不振に陥り、従業員を解雇した経験があります。
弁護士をつけて、従業員を解雇した経験もあります。
そして、解雇してしまった従業員たちの前で、土下座をしたこともあります。

当時は、相当きつかった。

だから、5年以上前に私は雇用をやめました。
現在、会社にいるパートナーたちは全員フリーランスです。

期限内で離れてしまうのは、辛いこともあります。
ですが、それも人と人だから。
お互いの人生を尊重した結果であれば、それでいいと思っています。

そして、この数年の間に、パートナーの一人に私のブレイバーAIを託したいと考えています。
取締役になってほしい人材がいるのです。

彼は私と性格が正反対で、とても頭がいい。
私にないものを持っている人間です。

人と離れることは簡単です。
ですが、人を引きつける事業を構築すること、そして自分自身の魅力を鍛え続けること。
起業して25年、いつまで経っても「まだまだだな」と思っています。

【免責事項】
※本記事はAI駆動経営における一般的な手法や考え方を解説したものであり、個別具体的な法務・労務アドバイスを提供するものではありません。AIに関する法律やガイドラインは過渡期にあり、常にアップデートされています。実際に社内制度の変更、契約の見直し、AIの業務実装等を行う際は、必ず弁護士や社会保険労務士、会計士、税理士などの専門家にご相談の上、最新の法令を遵守して進めてください。