公表だけで描いた「被害の地図」
— AIと作った公表アトラス
この秋、ほとんど毎日のように、どこかの組織が情報漏えいやサイバー攻撃の被害を公表している。ひとつの委託先が攻撃されると、その先にある何十もの組織が、それぞれのお知らせのページで同じ事故を公表する。
一つひとつは小さなお知らせだ。しかし並べてみると、被害がどれほど身近に起きているかが、はっきり見えてくる。それを形にしたのが「公表アトラス」だ。
shield「責める」ためではなく、「備える」ために
最初に決めたのは、何をしないかだった。
- 特定の組織を責めない。順位もつけない。件数の多い少ないは、被害の重さや対策の良し悪しを表さない。
- 報道やまとめではなく、組織自身が公表したページだけを出典にする。
- 公表文に書かれていないことは書かない。わからないことは「不明」と書く。
被害に遭った組織は、加害者ではない。公表したこと自体が、利用者や取引先への誠実な行動だ。だからこの地図は、誰かを晒すためのものではない。「自分のところにも起きうる」と知ってもらい、備えにつなげるためのものだ。
schedule件数だけでは見えないもの
もう一つこだわったのが、「判明から公表までの日数」だ。
件数は、それだけで目を引く。しかし本当に大事なのは、被害が分かってから、利用者が知るまでにどれだけ時間がかかったかではないか。公表文に判明日が書かれている事案では、その日数を立体図の高さとして見られるようにした。これも評価ではない。どこで時間がかかるのかを、社会全体で考える材料にしたい。
fact_check作るAIと、確かめるAIを分ける
この地図は、私とAIで作った。ただし、AIに任せきりにはしていない。
- 公表を見つけ、ページを保存し、内容を読み取るAI。
- それとは別のAIが、作った側の手順を知らされないまま、公式ページを自分で読み直して、間違いや言い過ぎを探す。
- 最後に、人が一件ずつ承認して初めて公開する。
実際、確かめる側のAIは、続報の取りこぼしや、日付の取り方のずれを見つけてくれた。直した内容は、版として履歴に残している。
AI駆動経営で一番大切なのは、AIの答えを信じることではなく、AIの答えを確かめる仕組みを先に作ることだと思う。作る役と確かめる役を分ける。これは人の組織でも同じだ。
database25年、データを扱ってきた会社として
ブレイバーは、データ消去とデータ復旧の現場に25年いる。データは「持たない」「消すべきときに確実に消す」「失っても戻せるようにしておく」。その大切さを、毎日のように見てきた。
公表アトラスは、その経験を、社会に返すための一つの形だ。まだ試験版で、名前も変わるかもしれない。それでも、確かめられた範囲を早く共有することが、誰かの備えにつながると信じて公開した。
この記事の要点
- 公表だけで描いた「被害の地図」——組織が自ら公表した情報漏えい・サイバー事案を、公式ページだけを出典に、立体図と地図で見られる「公表アトラス」を作った(2026年10月14日時点で500件を超える公表を掲載)
- 目的は「責める」ことではなく「備える」こと。順位も評価もつけない
- 件数だけでなく「判明から公表までの日数」を見られるようにした
- 作るAIと確かめるAIを分け、最後は人が承認する。AI駆動の要は「確かめる仕組み」
- 公表アトラス: https://masamune.ai/incident/
よくある質問
公表アトラスとは何ですか?
国内の組織が自ら公表した情報漏えい・サイバー事案を、組織の公表ページだけを出典に整理し、立体図・日本地図・時系列で見られるようにしたウェブサイトです。試験版として https://masamune.ai/incident/ で公開しています。
特定の組織を評価・批判するものですか?
いいえ。順位づけや評価はしません。件数の多い少ないは、被害の大きさや対策の良し悪しを表しません。被害が身近に起きていることを知り、備えにつなげることが目的です。
AIで作った情報は正しいのですか?
作るAIとは別のAIが、公式ページを自分で読み直して誤りや言い過ぎを探し、最後に人が一件ずつ承認してから公開しています。誤りが見つかれば訂正し、版として履歴に残します。